・NEWS


 単著『物語とトラウマークィア・フェミニズム批評の可能性』青土社、2022年、重版3刷になりました。発売中です。

 

2022年10月4日、初の単著『物語とトラウマークィア・フェミニズム批評の可能性』(青土社、2022年)が発売されました。増刷第3刷です。読んでくださいまして、ありがとうございます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。帯は多和田葉子さんに書いていただきました。

 

トラウマ的な出来事を経験した人びとにとって、文学や文化は生きのびるための表現となりうるのか——
多和田葉子、李琴峰、古谷田奈月、森井良、林京子、大江健三郎、岩城けい、小野正嗣といった現代作家の作品を丁寧に読み解き、物語を受けとるという営みとは何か、小説と読者が出会うとはどういうことか、それにクィア・フェミニズム批評はどうかかわるのか、自身の経験とときに重ね合わせながら文学や文化の力を見出していく。気鋭の研究者による、トラウマという語ることがむずかしい経験を語るために物語があるのだということを、そして何より新たな対話の可能性を信じるすべての人におくる、画期的な文学論。(青土社HPより http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3727)

 

・書評

 

「物語とトラウマ」書評 閉塞感揺らぎ 微細な声を聴く

 

評者: 藤野裕子さん / 朝⽇新聞掲載:2022年12月03日 https://book.asahi.com/article/14783149


『すばる』2023年8月号「トランスジェンダーの物語」特集に、「僕と自分を呼ぶことが義務づけられた私」という短編小説を書きました。
この特集では、本当にたくさんの方がそれぞれの物語を紡いでいます。そして、エッセイ、随想、素晴らしいものでした。ぜひご覧ください。
また、特集のリード文で、「本特集には、差別にあたる表現や胸が苦しくなる描写も含まれます。しかし、本特集は、現在の社会状況を見つめ、あらゆる差別や無関心に抵抗して、変革や希望を見出そうとするものです」と明記しています。これは大事な点だと思います。

『すばる』2023年8月号

発売日:2023年7月6日 価格:定価1,100円(税込)

https://subaru.shueisha.co.jp

 

特集:トランスジェンダーの物語

 

・小説

桜庭一樹 赤

倉田タカシ パッチワークの群島

川野芽生 Blue

岩川ありさ 僕と自分を呼ぶことが義務づけられた私

鈴木みのり トランジット

 

・エッセイ

中村 中 いつになったら、私は人間になれるのだろうか。

三木那由他 私たちには物語が必要だ

高井ゆと里 トランスジェンダーの定義を知りたいあなたへ

 

・随想

周司あきら 家父長の城


『群像』2023年7月号から、「養生する言葉」を連載中です。よろしくお願いいたします。https://gunzou.kodansha.co.jp/

 

「言葉は自分を超えて、誰かの背中を支える。それは、誰かの生を養う言葉、つまり、養生する言葉になるのではないだろうか。これまで積み重ねられてきた養生する言葉によって、自分の生をいたわることができれば、生きのびることができるかもしれない。言葉は時代や社会と結びついているので、生きのびることができる言葉を増やすには、この社会を変えてゆく必要もある。養生する言葉はそのための足場をくれる。」(『群像』2023年3月号、「養生する言葉」)

 

「大きな言葉、強い言葉ではなく、自分をねぎらい、心のエネルギーを増やしてくれる言葉が人生には必要だ。そこから力をえて生きられるようなちょこんと置かれた言葉。それをわたしは養生する言葉と呼んでみたい。生きるためのヒントとなる言葉、生きることを養ってくれる言葉は背中を支えてくれるだろう。」(『群像』2023年7月号「養生する言葉」第1回)

 

「自分に起きていることのメカニズムを理解したうえで、わたしの物語がゆっくりとはじまる。傷つきや苦しみの経験は誰かと共有されて物語になってゆく。養生する言葉の前には傷を見つめる言葉があるのかもしれない。けれども、急がないことが大切だ。無理やり自分について知ろうとするのは、自分を軽視し、再度、傷つけることにも繋がる。体調や心の調子はどうですか? 今日はお話を聴いてもよいですか? ゆっくりとお話ししましょうねと自分に尋ねるところから、トラウマをめぐる自分との対話ははじまる。踏み込みやすい自分の心に何度でも許可をとること。他者として尊重すること。わたしはここからはじめてみようと思う。」(『群像』2023年7月号「養生する言葉」第1回)


・2021年5月 文芸誌『APIED アピエ』 vol.37の特集・オルコット『若草物語』newに、「Llittle Trans women」という短編小説を寄稿しました。トランスジェンダーの女の子がオルコットの生家へ旅する物語です。世界中のトランスの人々に物語があって、安全な場所で生きられたらと祈る小説です。http://apied-kyoto.com/book.php